毎年10月23日は『化学の日』です。何故、10月23日が『化学の日』なのかというと、化学で使用するアボガドロ定数6.02×1023からきています。1023 だから10月23日です。そして、1023 というのは1の後に0が23個ついた数を表しています。
例えば、鉛筆なら12本が1箱に入っています。12本単位だと分かりやすいのでこれを1ダースと呼んでいます。物は何であっても12個で1ダースです。例えば水分子ですが水分子12個で1ダースの水分子です。でも水分子は非常に小さいので1ダースの水分子(12個の水分子)では目にも見えないし、重さを量ることもできません。では、どれくらいの水分子が集まれば目に見えて重さを量ることができるのでしょうか。水分子が6.02×1023個 集まれば18gになります。そうすれば目に見ることが出来、重さを量ることが出来るようになります。水分子の分子量は18です。アルミニウムの原子量は27です。アルミニウム原子が6.02×1023個 集まれば27gになって目に見えるようになり、重さを量ることができるようになります。つまり、分子や原子が6.02×1023個 集まれば分子量や原子量にgを付けた重さになるということです。
12個の集まりを1ダースと言うように、この6.02×1023個の集まりを1モルと呼んでいます。鉛筆も6.02×1023個集まれば1モルの鉛筆ですが、それだけの鉛筆だと地球は鉛筆であふれてしまいます。原子や分子のような非常に小さい物は1モル(6.02×1023個)集まってやっと目に見えたり、簡単に重さを測れる量になるのです。
6.02×1023 を指数表現を使わずに普通に書くと 602000000000000000000000 となります。右の桁から『一』『十』『百』『千』『万』『十万』『百万』『千万』『億』『十億』『百億』『千億』『兆』『十兆』『百兆』『千兆』。まだ足りません。『兆』の上は『京(けい)』という単位で、『京』『十京』『百京』『千京』。まだ足りません。『京』の上は『垓(がい)』という単位で、『垓』『十垓』『百垓』『千垓』。アボガドロ定数(※注1)は『六千二十垓』(※注2)という数字です。
世界の人口が約80億人。日本の国家予算が約100兆円。『億』や『兆』は見たことがあっても『京』や『垓』は見たこともない単位です。地球上に存在する水の重さで約15垓kgほどかと思います。
江戸時代の算術書『塵劫記(じんこうき)』には『垓』より更に上の単位についても書かれています。
『一』 100
『十』 101
『百』 102
『千』 103
『万』 104
『億』 108
『兆』 1012
『京』 1016 (けい)
『垓』 1020 (がい)
『秭』 1024 (し)
『穣』 1028 (じょう)
『溝』 1032 (こう)
『澗』 1036 (かん)
『正』 1040 (せい)
『載』 1044 (さい)
『極』 1048 (ごく)
『恒河沙』 1052 (ごうがしゃ)
『阿僧祇』 1056 (あそうぎ)
『那由他』 1060 (なゆた)
『不可思議』1064 (ふかしぎ)
『無量大数』1068 (むりょうたいすう)
日本で江戸時代にこのようなとてつもなく大きな数字について考えられてきたことに驚いています。日本というよりも漢字文化圏の国々においてと言う方が正しいでしょうか。
浄土宗の根本経典は『浄土三部経』です。『仏説無量寿経』『仏説観無量寿経』『仏説阿弥陀経』を指しています。年忌法要の中で読んでいる経典が『仏説阿弥陀経』です。その中の一節に、
東方亦有(とうほうやくう)阿閦鞞仏(あしゅくびぶつ)須弥相仏(しゅみそうぶつ)大須弥仏(だいしゅみぶつ)須弥光仏(しゅみこうぶつ)妙音仏(みょうおんぶつ)如是等(にょぜとう)恒河沙数諸仏(ごうがしゃしゅしょぶつ)
『恒河沙』という単位の数が出てきます。訳すると
東方にも亦、阿閦鞞仏、須弥相仏、大須弥仏、須弥光仏、妙音仏、是(かく)の如(ごと)き等(とう)の恒河沙数の(1052にも及ぶ数の)諸仏(しょぶつ)がましまして、
となります。
私たちは仏さまに守られて生かさせて頂いています。想像もつかない多くの仏さまのお陰さまと報恩感謝の気持ちを新たにして日々の暮らしにいそしみたいものです。
※注1 初稿では『アボガドロ定数』ではなく『あぼがどろ定数』となっていました。訂正しました。
※注2 初稿では『六千二十垓』ではなく『六千二百垓』となっていました。訂正しました。