住職のひとりごと(令和4年11月29日)

ロナとクエタの制定に寄せて

 私が初めて購入したパソコンは昭和54年(1979年)の9月にNECから発売された PC-8001 で記憶容量は16kB(キロバイト) でした。同時に増設用メモリ16kB も購入して32kBで使用していました。

 初めて購入したDOS/Vパソコンは平成元年(1989年)の5月に購入したGateway2000社の4DX2-66Vというパソコンで記憶容量は標準で8MB(メガバイト)でした。

 平成20年(2008年)7月11日ソフトバンクから iPhone 3G が発売されました。記憶容量は16GB(ギガバイト)のものでした。それまでドコモの携帯を使っていた私は iPhone 3G を使いたかった為に MNP(携帯電話番号ポータビリティ)を使って携帯電話番号そのままでドコモからソフトバンクに乗り換えて、発売日に iPhone 3G を入手しました。当時、iPhone 3Gを使っている人を見ることは皆無で、初めて他の人が iPhone 3G を使っているのを見たのはその年の11月修学旅行の引率でフランクフルトへ行く飛行機の機内でドイツ人の方が使っているのを見たのが最初でした。iPhone 3G を使い出してからずっとスマホは iPhone です。最近は新しい iPhone に手を出していなくて、現在使っているのは iPhone X で記憶容量は256GBのものです。

 タブレットも使っています。今使っているタブレットは Apple社の iPad Pro で記憶容量は 1TB(テラバイト) のものを使っています。

 コンピュータやスマートフォンやタブレットの記憶装置はデジタルで記憶します。簡単に言うと『0』か『1』かで記憶します。このような『0』か『1』の2つの状態のどちらかを表す情報の量を1ビットと呼びます。

1ビットでは
『0』
『1』
の2つの状態しか表すことができませんが、ビットの数を増やして2ビットにすると
『00』
『01』
『10』
『11』
の4つの状態を表すことができます。3ビットなら
『000』
『001』
『010』
『011』
『100』
『101』
『110』
『111』
の8つの状態を表すことができます。

 4ビットなら16、5ビットなら32、6ビットなら64、7ビットなら128、8ビットなら256の状態を表すことができるようになります。この8ビットを1B(バイト)と呼んでいます。アルファベット26文字なら数字や記号を入れても1B(バイト)(256通りの状態)あれば全て表すことができます。日本語の『ひらがな』や『カタカナ』や『漢字』は1B(バイト)では表すことができないので2B(バイト)を使っています。2B(バイト)あれば256×256=65,536通りの状態を表すことができ、膨大な数の漢字も表すことができます。

 そして、1000倍を表す接頭語が『k(キロ)』、1kB(キロバイト)は一千B(バイト)
 そのまた1000倍を表す接頭語が『M(メガ)』、1MG(メガバイト)は百万B(バイト)
 そのまた1000倍を表す接頭語が『G(ギガ)』、1GB(ギガバイト)は十億B(バイト)
 そのまた1000倍を表す接頭語が『T(テラ)』、1TB(テラバイト)は一兆B(バイト)

となっています。

日本語文字で考えると(新聞朝刊の文字数を約50万字として)

 記憶容量16kBのPC-8001なら約八千文字 (新聞朝刊約2/3ページ分)
 記憶容量 8MBのGatewayなら四百万文字 (新聞朝刊約8日分)
 記憶容量16GBのiPhone 3Gなら八十億文字(新聞朝刊約44年分)
 記憶容量 1TBのiPad Proなら五千億文字 (新聞朝刊約2700年分)

となります。 この40年間で記憶容量は飛躍的に増加しています。

 これらの『k(キロ)』『M(メガ)』『G(ギガ)』『T(テラ)』は1960年(昭和35年)の第11回国際度量衡総会で制定されています。制定されてから約60年程経過してやっと日常的に使われるようになった接頭語『T(テラ)』です。

 1975年(昭和50年)の第15回国際度量衡総会においては

 『T(テラ)』の1000倍を表す接頭語『P(ペタ)
 『P〈ペタ)』の1000倍を表す接頭語『E(エクサ)

が制定され、1991年(平成3年)の第19回国際度量衡総会においては

 『E(エクサ)』の1000倍を表す接頭語『Z(ゼタ)
 『Z〈ゼタ)』の1000倍を表す接頭語『Y(ヨタ)

が制定され、今年(令和4年)の11月に開催された第27回国際度量衡総会においては

 『Y(ヨタ)』の1000倍を表す接頭語『R(ロナ)
 『R(ロナ)』の1000倍を表す接頭語『Q(クエタ)

が制定されました。まとめると、

 1kB(キロバイト)は一千B(バイト) 103
 1MG(メガバイト)は百万B(バイト) 106
 1GB(ギガバイト)は十億B(バイト) 109
 1TB(テラバイト)は一兆B(バイト) 1012
 1PB(ペタバイト)は千兆B(バイト) 1015
 1EB(エクサバイト)は百京B(バイト)1018
 1ZB(ゼタバイト)は十垓B(バイト) 1021
 1YB(ヨタバイト)は一秭B(バイト) 1024
 1RB(ロナバイト)は千秭B(バイト) 1027
 1QB(クエタバイト)は百穣B(バイト)1030

となります。今から60年後のタブレットの記憶容量は1QB(クエタバイト)になっているかも知れません。それでも漢字で表した単位で『穣(じょう)』止まりです。その上の『溝(こう)』『澗(かん)』『正(せい)』『載(さい)』『極(ごく)』『恒河沙(ごうがしゃ)』『阿僧祇(あそぎ)』『那由他(なゆた)』『不可思議(ふかしぎ)』『無量大数(むりょうたいすう)』までいくにはアルファベット26文字では足りません。今年制定された『R(ロナ)』と『Q(クエタ)』の接頭語も仕える文字が『R』と『Q』ぐらいしか残っていなかったということらしいので。

 垓(がい)、秭(し)、穣(じょう)などの漢字で表した単位については『化学の日に寄せて(令和4年10月25日)』を参照して下さい。

 ちなみに地球の質量は6Rg(ロナグラム)、木星の質量は2Qg(クエタグラム)になるそうです。

 命日のお勤めで読んでいる 仏説観無量寿経 第九 真身観文の経文中には『於円光中(おうえんこうちゅう)有百万億(うひゃくまんのく)那由他(なゆた)恒河沙化仏(ごうがしゃけぶつ)』とあります。訳すると『その円光の中には、(無量寿仏の分身である)化仏が百万億那由他恒河沙も浮かび上がっている』となります。百万×億×那由他×恒河沙(106×108×1060×1052=10126)の化仏とは1MQQQQ(メガ クエタ クエタ クエタ クエタ)(106×1030×1030×1030×1030=10126)の化仏ということで、要するに想像を絶するような数を表していることになります。私たちは想像もつかない数の仏様に守られて生活をさせて頂いていることに改めて感謝しているところです。つまり、お経の世界は『Q(クエタ)』を4回掛け合わしたよりも広大な世界なのです。